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月の光とミカン箱

  • Day:2013.06.19 20:07
  • Cat:雑感
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第二論文 「等音面の理論~音響対称性の数理~」が書きあがりました。

これは実証実験で明らかにした事実をもとに、
「フォノグラム」を「等音面の理論」として書き直したものです。

どちらかというと、数学的な取り扱いに至るまでの哲学的考察が書かれています。

いわゆる総論的な内容です。ここから先は純粋な数学的研究になっていくと思います。


ここまで本当に長い道のりだったと思います。

ふと恩師(数学者)との会話を思い出していました。

初めてフォノグラムという現象に遭遇したとき、わたしは恩師に向かってこういったのを覚えています。
もう15年くらい前になりますが、、。

私:「先生、これは科学で解明するのは不可能だと思います。」


恩師:「怒!不可能と言ってはならん!不可能ならば、その不可能性を証明したまえ!
    それまでは一切、不可能という言葉を口にするな!」

私: 「、、、、、、は、はい、、、、、汗。」


その時は、まさか本当にここまでやれるとは思っていませんでした。
今は亡き恩師にやっと報告ができそうです。

私がここまでやってこれたのには、ひとえに、この恩師のおかげなのです。

よく、D大学歴代総長の言葉が拝見できる(色紙に書かれている)食堂に連れて行かれて
次のように説教されていました。

恩師:「いいかい、オノダくん。あの色紙に書かれている言葉をみたまえ。」


金銀うちになし

私:「な、なるほど、、、。わかりました。」

数学を教わる前に、とにかく精神的に潔白であることを求められたのを覚えています。
そしてそうあり続けなさいと、、。

また、私が引っ越しをした時のお話ですが、

恩師:「オノダくん。昨日はどのくらい勉強が進んだかね?」

私:「昨日は引っ越しで机も光もなかったのでできませんでした。」

恩師:「私のような、戦時中、学徒出陣を経験した世代のものは、昼間工場で働いて、その後
    月の光とミカン箱で勉強したのだよ。
    睡眠時間は3時間くらいであとは寝る間も惜しんで勉強したものだ。
    本も買うことができず、わら半紙にすべて手書きで写したんだ。
    そういう時代だったんだ。」

この会話が今でも忘れられません。

あれから15年。
日本、そして日本人の心の変化を見るにつけ、恩師が私に何を伝えようとしたのかが
よくわかります。


[月の光とミカン箱]


これが、私の「原風景」になっているようです。




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等音面の理論   ~音響対称性の数理~

フォノグラムの実証から半年が経ちました。
これについて論文にまとめたものが第一論文「音の作る形」でした。
実証が長いあいだ出来なかったおかげで理論を進めることができました。
もし実証がすんなりできていれば理論は育たなかったと思います。
以下は公に発表する研究発表(第二論文)の要約です。
(もう提出済みのものですが、なかなかの高評価を頂けたようです。)
数学者に向けて発表する内容ですので難しいかもしれませんが
これこそ私が長年、考えてきたことなのです。
ちなみに次の論文は、音楽とフォノグラムについてのものです。
音楽が時間的対位法ならばフォノグラムは空間的対位法であるということをテーマにして
音楽と数学、時間と空間についての論考を予定しています。



等音面の理論   ~音響対称性の数理~


本稿は、音響対称性の概念に基づいた「等音面」の数理物理学的研究の導入についてのものである.筆者論文「音の作る形」において、従来のヴァイオリン製作法とは根本的に異なる方法を提示した.それは、形から音を決定するのではなく,音(タッピングトーン)から形を決定するという方法であった.これこそ共鳴の原理に立脚した方法であり,等音面(音響的な対称性)なる概念に導かれた.
また、圧電スピーカーを利用する測定方法により,タッピングトーンに基づく制作法が科学的に正当化された.測定により明らかにされたのは,等音面が,見事に共鳴板の各点において同一の振動数分布を示したという事実である.また、同様に、等音面でない共鳴板は,固定端(外枠)が同じでも、共鳴板の各点の振動数分布は全く異なっていることがはっきりと示された.この結果を踏まえて,等音面の実現が,ヴァイオリン制作上の根本原理になりうることを示した.
そこで本稿では、音響対称性という概念をより抽象化、厳密化するために、等音面の数理的研究に着手する.我々の実験が明らかにしたことは、音響対称性を高くしていくに従って、共鳴板の各点における振動数分布がある一つの分布状態に収束していき、またその時、物理的、幾何学的形状が、ある理想形体に収束していくという事実である.
そこで次のような命題を立てることができる.

「理想等音面とも言うべき音響対称性が最も高い状態の振動数分布とは一体どのような分布に収束していくだろうか?またその時の幾何学的形状は?」

少し考えれば、その振動数分布状態はホワイトノイズ型になるであろうと予想される.(ホワイトノイズ型の定義はあとで行うものとする.)また、幾何学的形状は、ある操作の極限として定義される対象物となる.このような命題を数学的に定式化し、実験事実と論証によって証明を与え、厳密な演繹体系を構築していくのが本稿のテーマである.
等音面及び音響対称性の数理を解析していく過程において、非常に豊富な数学的構造が隠れていることを明らかにする.
従来の音と形に関する数理的研究で有名なものは、Kacの論文「Can one hear the shape of a drum ?」に代表される等スペクトル問題の研究がある.本稿における研究手法は、それらの先行研究と本質的に異なるものである.Kacに代表される音と形の研究は、純数学的に演繹されたものであり、微分方程式の境界値問題として、定式化されたものである.しかし我々の出発点は、物理的実証実験で得た結果より帰納的にその数理を構成していくところにある.
等音面を構成する方法は「部分と全体の情報を同時に含む響きという量:タッピングトーンに基づいたものであり、非線形問題の典型であることも重要な論点である.
また、等音面の実現には、和声法等の音楽理論が本質的な役割を果たしている.我々の構築する数学的理論が、物理的実験結果のみならず、これら音楽理論との整合性を図るものであることを示すことができる.
以上のような観点から、Kacらの研究との比較について論じ、スペクトル幾何学からは決して演繹することができないであろう数学的構造の存在を示す.また、ホワイトノイズ解析などのホワイトノイズの定義も、本稿に出てくるホワイトノイズの定義と基本的に異なる.我々のホワイトノイズの定義は、操作の理想極限として定義される.そして、それが互いに素な振動数比の無限集合を構成することを示す.この無限集合は比の集合であり、スケール変換普遍という性質を持つ.
我々の研究は、あくまで、実験事実から得られた事実から帰納的、発見的に数理を構築していく数理物理学的な研究手法であり、既成事実から演繹される純数学的な研究手法ではないことを強調しておく.また、ここで示された実験事実は、筆者論文「音の作る形」において初めて示されたものである.
まず初めに、実験結果からタッピングトーンが「響き方」を測る量であることを数学的に定式化することから始める.
「音を聞いて削る」という操作を定式化することにより、連続群の構造を持つことを示す.この連続群を音響変換群と名づけ、それが作用する空間を関数空間の特別の場合として定義する試みをする.また、この変換群における不変量が「ホワイトノイズ不変量」であることを示し、その時、リーマン面の理論における一意解析接続と「音を合わせて掘る」という操作が形式的に一致することを示す.
また、幾何学的形状が操作の極限として現れる数学的構造を示し、その結果、数学の異なる概念の間に橋を架ける試みをする.
また、新たに導入された概念については「定義」を与え、若干の「公理」と「共通概念」を仮定しさえすれば、全ての事実はそこから導かれるような形式公理系の研究も並行して進める.物理学の公理化は、あまり意味をなさないという意見もあるが、本研究のような数学、音楽、物理学が横断するような対象に関しては、有効な研究手法であるように思える.等音面の実現には生理的反応に基づく和声学的な事実を公理としなければ不可能である.しかるに、等音面の実証、測定には、その公理は不要である.これは、科学とは何か?音楽とは何か?という学問の境界を示すことにもつながる研究にもなると思われる.公理をどこまで仮定するかによって、各学問分野が重なるところ、独立なところをはっきりさせることができるということで公理的研究は意味があるのである.楽器制作研究は、音楽と数学、物理が衝突する大変興味深い研究対象なのである.

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カッツ論文との比較

数学に詳しい人ならば、「音の作る形」という論文の表題から、「太鼓の音を聴き分けられるか?」というM.カッツの論文を想起されるかもしれません。
以下は、それについて書いた発表用のレジュメからの抜粋です。


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カッツの研究との相違点

① M.カッツの研究
カッツは論文「太鼓の形は聞き分けられるか?」において、太鼓の音を聴くことによって、その幾何学的形状を知ることができるか?という問題を提起した。
太鼓は「膜の振動」という物理系である。
太鼓の膜の振動はある微分方程式と境界の形状に基ずく境界条件で記述される。
その境界条件を伴う微分方程式のスペクトル(固有振動数)から、太鼓の幾何学的形状を知ることができるかという問題である。
これは「等スペクトル問題」として、次のように数学的に定式化される。

「二つのコンパクトなリーマン多様体が与えられ、ラプラシアンの固有値が重複度を含めて完全に一致しているならば、それらはIsoMetricか?」

等スペクトル問題は逆問題の特殊な例になっており、この論文のタイトルが逆問題の有名な標語になった。
カッツの論文により明らかにされたのは「太鼓の音から、その面積、周の長さ、穴の数が聞き取れる」ということであった。これらの成果にもかかわらず、境界の形状を推測できるかという一般的な疑問には答えられなかった。
「等スペクトル問題」のこのような問題意識は、その後「スペクトル幾何学」として発展し、様々な研究がなされている。

② 筆者論文「音の作る形」という標題から、カッツの研究を想起される方が多いだろうと思われる。以下、「音の作る形」の標題の意味を明らかにし、カッツの「等スペクトル問題」との相違点を明らかにする。

「等スペクトル問題」は、太鼓は「膜の振動」という物理系であるとし、それが微分方程式と
その境界条件で数学的に記述できるという前提から出発している。
また、その前提からスペクトル(固有振動数)というものを考えることによって理論を展開するのである。
太鼓といっても、それは微分方程式の境界値として定義されるものであり、物理的な情報はそこには一切含まれていない。
また、音といっても、それは実際の物理的な音ではなく、微分方程式とその境界条件から導かれる
スペクトル(固有振動数)である。

カッツの「太鼓の形は聞き分けられるか?」という標題は、
純粋な数学の逆問題としての意味を込めたものであり、物理的な意味合いは全くない。
研究手法は、あくまで数学的であり、結論のすべては演繹的に導かれる。

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これに対し、「音の作る形」の表題の意味するところは、
「実際の音響的な音が物質形状を決定するという物理の問題である」
ということである。
我々の研究は、ヴァイオリンなどの弦楽器制作という実際上の問題から出発している。
研究手法は、物理測定に基ずくものであり、結論の全ては測定事実から帰納される。
そうして帰納された結論を数学的に定式化し、理論化するという数理物理学の方法である。

一般的に、材質が違えば音色は異なる。
カッツの問題における音とは音色ではなく、音の周波数(スペクトル)だけを問題にしていることについても触れておく。

楽器制作の研究は音色の研究である。
音色についての定義はいろいろ存在するが、本稿では以下のように定義する。

「音色とは、音の周波数(スペクトル)の分布状態である」

スペクトルアナライザーを利用すれば、どの周波数がどれだけの振幅になっているのか
が視覚的に捉えられる。

人間は音色を知覚するとき、スペクトルアナライザーのように各周波数に分解しているわけではなく、複数の周波数が重ね合わさったいわばノイズとして知覚するのである。
重ね合わさった周波数の中で、代表的に聴き取ることができる音群が協和関係であれば「澄んだ音色」として知覚し、不協和関係であれば「濁った音色」として知覚される。
また、協和、不協和という概念は、和声学から導かれるものであり、物理学からは説明することができない。

我々の研究は

「アウトラインの決められた共鳴板において、その各点における音色を同一にするように削って行くとき、共鳴版はどのような形状(隆起、カーブ)に収束していくのか?」

というものであり、論文「音の作る形」において「音響対称性」なる概念を導入し、「等音面」
の物理的実証を可能にした。

カッツ論文「太鼓の形は聞き分けられるか?」における「音」の意味は
スペクトル(周波数)を指すものであり、「音色(上記定義)」ではない。
これに対し、筆者論文「音の作る形」における「音」の意味は
「音色(上記定義)」を指す。

現実の世界において、音は物がなければ存在できないという意味で物理学でしかありえない。
また、自然界において単一周波数の音などというものは存在しない。
存在していないものをいくら重ね合わせても自然な音色にならないことはシンセサイザーの音を聴けば明らかである。
したがって、自然な音色を作りたいという楽器製作の問題が、スペクトル(固有振動数)を出発点としてもナンセンスである。
クラドニ法が物珍しいばかりで、楽器制作上の役に立たないのも同様な理由からである。

また、既成の物理学的事実によれば、固定端が決定されている共鳴板において、その固有振動は
決定されている。
しかし、筆者論文「音の作る形」において、固定端が同じ共鳴板でも、各点における周波数分布
は一般的に異なっていることが示された。
これは、「膜の振動」という物理系が微分方程式とその境界条件で表すことができるが、
実際の物理系では、そうはなっていないということの証明である。
むしろ、この微分方程式と同じように振る舞うような理想極限を物理系で近似する技術が
等音面の制作技術である。
したがって、実際の共鳴板に含まれる、スペクトル(固有振動数)は限定的なものであり、
そういう意味においても、カッツの研究から等音面を演繹することはできない。

等音面は、音響対称性を高くしていった理想極限として現れる幾何形状であるが、これらの幾何形状は一意的に決定されるのである。

また、音響対称性最大の理想極限を理想等音面として数学的に定式化すれば、それはスペクトル幾何の結果と矛盾しないはずである。
以上、カッツ論文との主な相違点について言及した。

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