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”真っ直ぐ”が難しい” ~袈裟縫いに見るフォノグラム(2)~

五条袈裟は五枚のピースを折り合わせたものです。
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また、その五枚の一枚一枚には、横号という袈裟特有の模様があり、そこにも縫い目があります。

ここで、たとえば、五枚のピースを一人の人間ではなく、複数人が分業して、後で一枚に縫い合わせたとします。

当然、糸の引っ張り方、縫い目のストロークの幅の微妙な違い、など、仕上がり具合が異なるピースが出来上がることになります。
また、一人で長時間、縫っている間に、身体が疲れてきて、同じように縫えなくなり、一人で縫っているにもかかわらず
異なる縫い目の仕上がりのピースが出来上がるかもしれません。
この仕上がりの異なる複数のピースを一つの袈裟として縫い合わせた時、統一感を欠いたただのパッチワークになってしまいます。
一流の袈裟職人は、この「部分と全体」の情報を瞬時に読み取りながら、
縫い方を微調整して、常に全体の仕上がりを意識して局部を縫っていくというとても難しい処理を無意識に行っています。

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これは、タッピングトーンという部分と全体の情報を利用して等音面を構成していく情報処理と同じです。

音の代わりに糸や布の引っ張り具合を等しくしていく「等(緊)張面」がよい袈裟ということができそうです。

等音面とは等緊張面といっても同じであるので、音は出ませんが袈裟も広義の等音面といっていいでしょう。
皮膚膜の張力を一定にするように施術していくという、フォノグラムを利用した整体技術も等緊張面を構成していく技術です。

ここで真っ直ぐに縫うことがいかに難しいかを考えてみましょう。

布の端から縫っていくわけですが、布の端と中央部では、微妙に条件が異なります。
また、号が重なり合うところは布が二重三重にもなっているので、生地の厚みが異なります。
そして、縫い合わせていけば布全体にかかる緊張状態が微妙に異なってきます。
これらを全て考慮に入れて、全体の仕上がりをいつもイメージしながら微調整して真っ直ぐなラインを作っていきます。

柔らかく、すぐに緊張度が変化する生地を相手に、真っ直ぐな縫い目を作っていくことの難しさがイメージできるでしょうか?



実は、このような”真っ直ぐ”という「等時、等速、等間隔の技術」は、あらゆる身体技法の基礎にあたるものです。



袈裟縫いというのは身体技法なのです。



たとえば、声楽家は発声練習において同じピッチで同じ発声を出し続ける練習をします。
これは、自分の体を同一の緊張状態に保ち続ける技術といっていいのですが、息を出し続けているので常に
身体内部の体積が変化し続けています。また、無駄な力が入っていればすぐに疲れ、声が揺れてしまいます。
ちなみに、「40秒以上、途切れず揺れずに歌い続けられないようではプロの声楽家にはなれない」そうです。

また、ヴァイオリンの運弓の技術で同じ音を極力長い間引くというロングトーンまたはソンフィーレという技術があります。
これも同じで、常に、楽器と弓の接触状態が異なっているのを計算したうえで、擦弦によって出された音が一定になるように身体の緊張度を微妙に変化させて調整します。

袈裟縫いの技術もこれと同じ身体技法を使います。

この「等時、等速、等間隔の身体技術」は、とてつもなくレベルの高い身体技法であることがあまり認知されていません。
これは、静止の技術でもあります。
静止というものができて初めて動きというものが理解できるのですが、現代人のほとんどは静止に価値を置きません。
動いていることに自己同一性を見出している人がほとんどです。しかし、動いているもの、変化しているものに実体はないのです。

等時、等速、等間隔の身体技術のエッセンスだけを取り出すと、座禅(静功)や単純なリズム運動(動功)になっていきます。

つづく


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