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縫禅 ~袈裟縫いに見るフォノグラム~

ブログを初めて2年ほど経ちます
その間、フォノグラムに強い関心を持たれた方で、わざわざ私のところまで足を運んでくださる方が幾人かおりました。
その中で、大変面白い視点でフォノグラムをとらえた方のお話をしたいと思います。
それは袈裟職人さんでした。
袈裟とは、お坊さんが身にまとう法衣のことですが、その形式は厳格に定められてものであり、ミシンは使わずにすべて手作業で行います。

*ミシンを使ったものもありますが、伝統工芸技術という観点からここでは手縫いによる袈裟だけを対象とします*
2012020803203391b.jpg

わざわざ一枚の反物を細かく裁断し、再び、一枚の布につなぎ合わせていきます。
ちょっと無駄とも思えるこのような工程にこそ、袈裟縫いが禅の要素を含んでいることを垣間見ることができます。
袈裟縫いというものは裁断した布をまっすぐな線で折り合わせて、ひたすら同じ間隔で縫い上げていきます。
すべて手縫いです。
縫い目はすべて直線ですし、型も定まっているので単純作業の繰り返しに過ぎないと思うかもしれません。
ところがそうではないところに袈裟縫いの本質があります。
201102242104543ec.jpg
(一直線上に並ぶ等間隔の縫い幅)


私は、音で楽器を削る方法:フォノグラム法を「削り禅;過去記事」と言っていますが、袈裟縫いがまさに「縫禅」であることをお話ししてみたいと思います。


よく私の作業を見ている方はこう言います。

「よくも一日中、休みなしで同じ作業を飽きずにすることができますね」

「何のために彫っているのですか?」

こんな感じの質問をよく受けました。
私はたいてい次のように答えていました。

「音を聴いて一定リズムで削っていくと入定して気持ちがよくなるからだ」

入定とは、心が静かに定まり、超集中状態になることです。法悦という言葉がふさわしいのではないかと思うような状態です。
つまり、ある作業に没頭すること自体が目的であり、何かを作るとか、いくら儲けるとかそういった知的な目的ではないということです。
ただ目の前のものごとに没頭することで、作業の跡(楽器、袈裟)が残ります。
以前、仏師さんとお話ししたときも、

「仏様に頂いた時間(没頭できた時間)を仏様(没頭することによって形になった仏像)にしてお返しする」

ということをおっしゃっていました。

そして、入定することができない人にとっては、一定リズムで行うこのような作業は
単純作業以外の何物でもなく長時間の苦痛でしかありません。

私のフォノグラムの技術も至極単純であり、誰でもできるはずなのですがなかなか会得できない理由の一つに
この「定に入る」ということができないことにあると思います。

袈裟職人さんも職人の育成に頭を抱えておられました。
禅の修行と一体になっていた袈裟縫いという伝統工法は、現代の資本主義体制に淘汰されてしまうのでしょうか?
これは、他の伝統工法の職人技にも同様に当てはまることだと思います。

丈夫で長持ちする本物の技術は、お金を回すことが第一目的の側からすれば邪魔でしかありません。
物を大切にする文化が失われ、大量消費の使い捨ての文化が当たり前になってしまいました。
職人が消えることは、禅が消えることであり、禅が消えるということは日本の精神文化(天地自然を愛でる精神性)が失われるということです。

そうなればフォノグラムの技術も、伝統工法同様、消え去ってしまうことでしょう。

フォノグラムの研究は、職人たちが普段感じている言葉にできない大事な何かを代弁するためのものでもあります。新しいカテゴリ、Artes arte(工芸の技法)において、フォノグラムというフィルターを通して、失われつつあるさまざまな伝統工芸を見直し、それにまつわる記事を掲載していきたいと思います。
次回は、袈裟縫いの技術が、いかに等音面を作るための技術に近いかということを記事にしたいと思います。
外から見たら単純に見える作業も、内的精神においては、非常に高度な情報処理をしていることを見ていきたいと思います。


つづく



*過去記事のインデックスです。 項目ごとに見やすくしてあります。*
過去記事インデックス



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Comment

磐座のおにょさま

お久しぶりです。
私のブログにも袈裟仕立てをされている方が時々
訪問してくださってます。
その方は女性ですが、数学にも興味があるようで
なんだか不思議な気分になりました。

日本の伝統工芸の職人の方の内的な精神の高度な情報処理。
作品にしか目が届かなかった今までとは違って
見過ごされていた職人の方の角度からの分析
楽しみにしています。

  • 2013/08/19 12:02
  • メロンボール
  • URL
メロンボールさん
ご無沙汰です。
chikuchikuさんのことですね?
彼女がその袈裟職人さんです。
僕のページからメロンさんのところに行ったみたいです。
実は、彼女は僕の数学の生徒です。
週一回ですが、社会人相手に数学を教えることになりました。
これからフォノグラムも教えていこうと思っています。
職人さんは良いものに理屈なしに飛び込んでくる勘を
持ち合わせておられるようです。
いろいろな職人さんとの交流の中で何か新しい展開が始まろうとしているかもしれません。
今後、そのようなこともUPしていこうと思います。
こうご期待!!
  • 2013/08/20 20:01
  • 磐座のおにょ
  • URL
おにょさん

本当に色々つながっていくんですね。
楽しみにしていますよ。
  • 2013/08/21 00:00
  • メロンボール
  • URL
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