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③無視できない「応力」  ~非対称性とカウンターバランス~

前回は共鳴版に真上から圧力を加え、フォノグラムがどう変化するのかを観察しました。
実際はE線の弦張力が強いため、圧力は真上から均等にかからず、E線側により強い圧力がかかります。
今回は、このことを中心に考えていきたいと思います。

実験;E線側に不均衡に圧力をかけた時、フォノグラムはどう変化するか?

まず、前回と同様に、*1音だけ圧力を加えてみます。   *意味は前回参照

g syup  gawa

圧力が共鳴版に対して不均等にかかるので、内部緊張も不均等になり、当然フォノグラムも歪みます。
しかもかなりの不均等が感じられます。
フォノグラムの渦の巻き具合で、均衡の崩れ度合いがわかります。

g syup dr gawa

ここまでは、実験しなくてもある程度予想することはできます。
実は、面白いのはこの次です。

さらに、もう1音上げてみます。

g syupu drd gawa

なんと、圧力が不均等にかかっているにも関わらず、フォノグラムは対称を保っています。
これは、内部緊張が均等であることを示しています。

g syup drd gawa yoko

これは、予想と反することのように思えます。
実際に実験してみないとわからないことです。

以上のことから何が見えてくるでしょうか?

前回のことを踏まえて考えますと、

①弦の張力は、縦方向に働くときは、歪みを補正する働きがるということ

②弦張力による圧力が不均等に共鳴版にかかったとしても、ある場合によっては、内部緊張は
 均等に保つことができる

ということが結論されます。
共鳴版にかかる圧力(垂直方向)は、うまくバランスさせれば、
内部緊張を均等に保つことができるといえそうです。


次に、もう一つ実験をしてみます。
今までは、「応力;ねじれ」の問題を除外してきましたが、
これについて実験してみたいと思います。

実験;共鳴版をねじったり、ひねったりした時、フォノグラムはどう変化するか?

g syup hineri  nom 
(クランプで共鳴版の端を固定し、片方にモノをはさんでひねった状態にする。
このひねりも音の変化の分だけひねります。1音だけひねるということです。)

以下が、その状態のフォノグラムです。

g syup hineri

もはや、真っ直ぐな線は見られません。
さらに音を上げてもこの歪みが解消されることはありませんでした。
弦張力による横方向の力の不均衡は、どうやら是正されないようです。

まとめ

①弦張力の縦方向の力の不均衡は、うまく調整さえすれば、内部緊張を均等に保つことができる。
これは、共鳴版だけの問題として考えることができると言えそうです。

②弦張力の横方向の力の不均衡は、どんなに調整しても、内部緊張を均等に保つことができない。
これは、共鳴版だけで問題を解決することができず、
別のところでカウンターのひねりを作ってやらなければならないことを示しています。
*これがネックを右に振ることに対応していることを後で見ます。*

これらの実験は、弦張力による圧力や応力のカウンターバランスを考える上でとても参考になる
データを与えるものであることがわかります。

これらは、熟練の職人が「勘」として片付けてしまっているものに
新たな説明を与えることができると同時に、「量」として捉えることを可能にします。

圧力変化による内部緊張の違いを、フォノグラムの図形変化で捉えることにより、
カウンターの力をどのくらい与えておけばいいかを正確に計算することができるのです。

例えば、垂直方向の弦の圧力15kgに対抗するカウンターバランスとして、バスバーの両端を少し
浮かせて、表板に圧着するというシュパヌングという技法がありますが、
これについても「勘」に頼らず「量」の問題として、もっと正確な捉え方ができるはずです。

次回から、これらの実験結果を踏まえた上で、
どうすれば正確なカウンターバランスを構築することができるのか
ということを考えていきたいと思います。
フォノグラムを利用することにより、新しい「量」の計算法が確立することを見ていきます。
これは、そっくりそのまま整体技術に応用することができます。

*というよりも、自分の身体を調整する技術をそのまま楽器の調整に利用することにより
 フォノグラムの研究はスタートしています。フォノグラムの正しさの保証は、実は身体の内部感覚
 の充実度(それは主観的と言われてしまうかもしれませんが)によります。
 客観的事実の羅列は、確かに足場にはなりますが、ほとんどがつまらないものです。
 物事の確かさを測る新たな基準のようなものがそろそろ考えられてもいいと思うのですが、、、。*


つづく


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